(実践)松本哉さん

リサイクルショップ店主

「大学を貧乏くさくせよ!」。「法政の貧乏くささを守る会」が掲げたスローガンだ。この会を結成したのは松本哉(はじめ)さん(45)。現在、高円寺にあるリサイクルショップ「素人の乱 5号店」で店主を務めている。

松本さん|法政大学新聞1048

松本哉さん

「こんな生き方をしていいんだ」

1994年、本学法学部第二部政治学科に入学した。オープンキャンパスではなく、普段のキャンパスの様子を見て本学へ入学することを決めた。「明治大学や早稲田大学も見に行ったけれど、その中で法政大学は一番活気があったと感じています。いろいろな人たちがいろいろなことをやっている、そうした賑やかさに惹かれました」。


入ったサークルは野宿同好会。「新入生歓迎会のとき、野宿同好会の人たちは寝袋に入っていたんですよね。寝袋には『興味のある人を起こしてください』って紙が貼ってあって、面白くて入会を決めた」。大学2年生のときには野宿同好会の会長となり、サークルの合宿は天安門広場に現地集合現地解散や、ママチャリで100時間耐久レースなど無謀な企画を月に1回のペースで行ったという。


在学中には「法政の貧乏くささを守る会」を結成。結成の理由は市ヶ谷キャンパスの再開発により、キャンパスが無機質になることを懸念したためだ。この会は本学の学食の値上げに対する反対集会などを行った一方で、キャンパス内でコタツや鍋を置いて飲酒なども行っていた。この行為を問題視した当局は松本さんに対して譴責(けんせき)処分を発表。当時を振り返り「ゲリラ活動のような、ふざけたことばかりやっていました。今になって、あれは相当大学側に迷惑をかけていたと感じます」。


なぜ現在はリサイクルショップを経営しているのか。いろいろなアルバイトを経験したなかで、リサイクルショップが非常に面白かったのが理由だという。「リサイクルショップは地域のお客さんとのコミュニケーションが数多くある。新品を買うだけならお金と交換するだけで会話は生まれない。しかし、リサイクルショップは中古品を売買しているわけだから、売った商品の調子が悪ければ直したり、場合によっては返金したりする。お客さんが引っ越すときには買い取りに行くなど、密度の濃い交流があります」と語る。このアルバイト経験がきっかけで、大学卒業後もリサイクルショップで働き続け、その後独立した。


リサイクルショップを経営する中で、強く記憶に残っていることがある。「もちろん中古品の売買を通して人の役に立って良かったな、というものは多くありますが」と前置きしつつ「そうしたなかでも、その女性の夜逃げを手伝ったのが印象に残っています。夜逃げと本人は言わないけれども、明らかに夜逃げという感じで」。ある日女性から「今日中に荷物を全部出したい。事情があって目立たない夜中にやりたい」とお願いされたのが発端だ。普段、深夜帯に活動はしていないものの「本当に困ってそうだったから手伝った。そっと荷物を車に放り込んだり、いらないもの全部を買い取ったりしました。あれは面白かった」と笑みをこぼす。「中古品の売買だけでなく、便利屋みたいなかたちで地域と交流しています。このほかにも、ファックスにつまった紙を直したり、飼い主に頼まれて病気にかかった犬を動物病院に連れて行ったりもしました。もちろん無償でやっていますが『あのとき、ありがとね』って言われると嬉しいですよね」とリサイクルショップで働く魅力について語る。


本学で就職活動をしている学生に対しては「まともな就職活動はしない方がいいんじゃないか」とアドバイス。「もちろんバリバリ働くのが好きな人は問題ないと思いますが『やりたくないけど、やっぱりやらなきゃいけないよな』くらいだったら就職活動は絶対がやめた方がいいと思う」と意見する。松本さんも学生だった頃は、いい職につき、給料をもらい、結婚し、家を買うといったことをしなければいけないと考えていた。「でも、そうした思いを法政大学がぶち壊してくれて、いい大学だなって思いました。当時の法政は混沌とした状態で『こんな生き方をしていいんだ』と思わせてくれる先輩がたくさんいた。大学卒業して、いきなり世界一周旅行に行く先輩もいました」と懐古する。「就職活動はやりたい人だけやればいいんじゃないでしょうか。自分がやりたくないことは絶対やらない、というのを貫けば絶対いい人生になります」。


(宇田川創良)

まつもと・はじめ さん 
1994年に本学法学部第二部政治学科に入学。在学中に「法政の貧乏くささを守る会」や「全日本貧乏学生総連合」を結成。著書に『貧乏人の逆襲! タダで生きる方法』『世界マヌケ反乱の手引書:ふざけた場所の作り方』など。

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