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「選択のとき」で新人シナリオ大賞優秀賞

本学卒業生・藤田委甫さんインタビュー

本学卒業生の藤田委甫さん(2014年社会学部メディア社会学科卒)が「第2回WOWOW新人シナリオ大賞」優秀賞を受賞した。優秀賞「選択のとき」は不妊治療の末に新たな命を授かり、出生前診断(※)で胎児がダウン症の可能性が高いと診断された夫婦の決断を描く。藤田さんに話を聞いた。

藤田さん|法政大学新聞1048

―作品を書くに至った経緯を教えてください 
「女性に関する問題に焦点を当てたドキュメンタリーを制作したく、卒業後は九州のテレビ局に記者として入社しました。その当時取材した出生前診断で陽性と診断された1人の女性にインスパイアされ、数々の取材を経て、フィクション作品が仕上がりました。書くのにかかったのは1か月ほどで、かなり速いスピードで書きあがりました。」

―「WOWOW 新人シナリオ大賞」にエントリーをした経緯を教えてください
「九州のテレビ局を退社後、会社勤めをしながらシナリオ学校に半年ほど通っていました。そのころからシナリオのコンテストにいくつか応募していました。フリーで書くことを仕事にするは、一発当てなければという思いがありました。「WOWOWシナリオ大賞」を受賞したのはシナリオ学校を修了してすぐでした。」

―作品への思い入れを教えてください
「取材や、自分自身が年を重ねたことによって女性の目線というものに重きを置いて書くことができたと思います。また、出生前診断や不妊治療といった問題をより身近に感じ、自分が妊娠して出生前診断を受けることができる立場であれば受けると思います。出生前検査という検査は女性の人生の選択肢が広がるという意味で肯定的です。」

――執筆で心がけていることがあれば教えてください
「自分が見たいものと、受け手が見たいものには乖離があるということを意識し、受け取り手のことを考えて執筆しています。出生前診断や不妊治療といったテーマは非常にセンシティブで、人によって受け取り方が違うということは想像しかできませんが、意識するようにしています。」

―どのような大学時代でしたか
「社会学部在学中は弁論部に所属し、出版社とテレビ局のアルバイトを掛け持ちしていたので忙しい生活でした。弁論部に所属していたのは、高校時代に弁論のコンペに応募したのがきっかけです。自殺問題をテーマに執筆し、書くことに興味を持ち今に至ります。今思えば、旅行に行くなどもう少し遊んでいればよかったなと思います。」

 

―今後どのような作品を書きたいですか
「脚本を書くことを仕事にしたいと考えていますが、最近のドラマは原作ありきの作品が大多数なので、小説を書いていきたいと思っています。関心が女性という存在に一貫して向いているので、女性をテーマに、特に悪女や女性のダークな面を描く作品を書きたいです。女性は特にいろいろな顔を持つ生き物だと感じます。」

​(中村真悠子)
 

【※出生前診断】
広い意味では、妊娠中に胎児の発育や異常の有無を調べる検査。近年では、染色体異常や遺伝性疾患の有無を調べる遺伝学的検査が特に出生前診断と呼ばれるようになる。母体血清マーカーといった非確定検査、確定検査の羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査が行われている。
 2013年に、母体血中の胎児由来染色体を調べる非侵襲性の新型出生前検査(NIPT)が日本で導入された。現在は大学病院など92施設が実施している。
 検査で明らかになるのはダウン症の21トリソミーと、精神遅滞や発育異常が出る13トリソミー、18トリソミー。日本産科婦人科学会は、検査対象を35歳以上の妊婦と、他の検査で染色体異常が疑われる場合に限定している。
 異常が見つかった場合、十分なカウンセリングを受けないまま中絶が選ばれる可能性があり、命の選別につながるという倫理的問題も抱える。母体保護法は胎児の異常を中絶の理由と認めていないため、母体の健康などとの拡大解釈で中絶されているのが現状だ。

ふじた・いほ さん 
東京都出身、2014年本学社会学部メディア社会学科卒業。卒業後テレビ西日本入社、2019年よりフリーライターとして活動。「WOWOW新人シナリオ大賞」で応募作品413作品から優秀賞を受賞。昨年12月、舞台「カケチガイ」の脚本を手掛ける。

※発行時の情報です

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