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再エネとデジタル化の展望
菅義偉氏にインタビュー
2023年5月17日
本学出身の政治家は多く見られるが、その中でも2022年度に第99代内閣総理大臣に選ばれた菅義偉氏を知らない読者はいないだろう。今回のインタビューでは、デジタル化や再生可能エネルギーに対する菅前首相の思いを語っていただいた。

前総理大臣菅義偉氏=筆者撮影
本学出身の政治家は多く見られるが、その中でも2020年度に第99代内閣総理大臣に選ばれた菅義偉氏を知らない読者はいないだろう。 今回のインタビューでは、デジタル化や再生可能エネルギーに対する菅前首相の思いを語っていただいた。
——法政大学法学部政治学科を目指された理由についてお聞かせください
私は高校卒業後、秋田から上京してきて、一度は就職しました。けれども、このまま終わりたくないという思いが芽生えてきて、やっぱり大学には入ったほうがいいだろうと思ったのです。
政治そのものにそれなりに興味があり、それと法政大学が当時一番授業料が安かった。今は高くなっちゃったけど、昔はすごく安かった。それで入ったんです。
——『政治家の覚悟』に「この国を動かしているのは政治だと考えた」とありましたが、具体的にどういった瞬間にそういうふうに思われたのでしょうか
自分は何がやりたいのかなと思って、ずっと探していたんですよね。それで大学に2年遅れて入って、その間もずっといろいろ考えていました。そういう中で就職をして、もしかしたら世の中を動かしているのは政治じゃないかというのを何となく感じることができたのです。
具体的に何がというわけではないですが、社会のシステムの大事なところを変えるのは政治だと感じました。
議員になれるとか、そういうのは何も考えていなかったです。ただ政治の場で働きたいという感じでした。
——総理大臣時代に高齢者の医療費2割負担をなぜ実現できたと思われますか
それは国民から見てある意味で当たり前の政策だと思ったのです。高齢者がどんどん増えてきて若い人はどんどん少なくなってきて、若い人の負担がものすごく増えていきますから。
けれど健康保険制度というのは、世界から見ても素晴らしい仕組みになっていますので、こうした仕組みを守っていくために一定の所得の人には2割負担をお願いしました。その分若い人の負担は少なくなったと思います。
——そういった若い人のためにというのは、どうして実現できたのですか
総理大臣ですから、若い人たちを応援したい。けれども、社会保障費の7割が高齢者の人たちのために使われています。
つまり、若い人達には3割しか使われていません。社会保障費のパイは決まっていますから、高齢者に偏っていたものを少し是正させて、若い人たちを助けてもらおうという仕組みです。
——デジタル庁の創設は縦割り行政の打破にどのように貢献したと考えますか
わが国には1700もの地方自治体がありますが、それぞれが全部バラバラにシステムを作っています。司令塔の機能が日本になかったものですから、司令塔を創り、全体を掌握して、システムを作っていかないと、無駄がものすごく多くなりますよね。
これからはデジタルの時代と言われながらも国は国、市は市、一つの県でも市町村ごとにシステムが違っていたら非常に非効率です。
それを税金を使ってやっているわけですから、効率化などを考えたとき、司令塔機能を果たすものを作っておかなければならないというふうに思いました。
——デジタル庁は今後どのように変化していくべきだと思われますか
例えば保険証とか運転免許証をマイナンバーカードと一体化することで、利便性が向上します。例えばいかに不便かという一例ですけど、引っ越しするとき、現在は転出先の役所に行って手続きして、また転入先の役所に行って手続きするといったように、手続きが煩雑でした。
こうした手続きをマイナンバーカードとスマホがあれば役所に行かなくてもできるようになる。
また例えば介護に関しても全部都道府県単位でやっていますが、今は大変な手続きが必要ですよね。こうした事例は少なくありません。
引っ越しの話を例にしましたが、こうした煩雑な手続きを全部スマホとマイナンバーカードがあれば手続きができるような仕組みになります。
——所信表明演説で「2050年までに脱炭素社会を実現させる」との表明をされましたが、実現のために求められるのは何だとお考えですか
例えば今、線状降水帯という大雨をもたらす雲ができて、大雨が昔と比べてはるかに多くなったり、異常な猛暑が続いて山火事になって山火事が消えなくなったりしている。こういうのは全部地球温暖化が要因になっていると国連は報告しています。
ですから、全体で二酸化炭素を出さないような仕組みにしていかなければならない。それで再生可能エネルギーに力を入れようということです。例えば、石炭なんかは結構炭素が出ますよね。それを出ないようにアンモニアと一緒に燃やして水素を作るとか、二酸化炭素のないものを作っていく。
例えば太陽光だとか、洋上風力など、そうした自然エネルギーを活かして取り組んでいくということです。
——先生の地元の秋田にある能代港と秋田港で、洋上風力発電が始動しましたが、まだ海外の輸入に頼る部分も多いものとなっています。国内の技術発展に何が必要だと考えられますか
今まで日本は自分の国で部分的に作っているところもあったのですが、数が非常に少なかった。これから思い切って、洋上風力の数を増やします。日本で開発をしている部品も二万点ぐらいあります。そういった部品は地元の中小企業の人に作ってもらうことで、日本に貢献できるようになると思います。
洋上風力というのは、柱で海底に打たれている洋上風力(着床式洋上風力)と、海に浮かばせる洋上風力(浮体式洋上風力)があります。日本でやろうとしているのは浮体式の方で、それが開発できれば日本だけではなく、アジアにも輸出できます。そうしたことで、大きな事業に繋がっていくと思います。
——地方が気候変動対策に取り組む動きが加速していますが、地方が取り組むことのメリットはどういったものがあると思われますか
地方では新しい産業が生まれますよね。先進地域というのも国が募集して、二酸化炭素削減に取り組み、グリーンを推進していく可能性のある地域を選んでいます。ですから、そこから様々な事業や雇用が生まれてくると思います。
——先生の地元の秋田でもそういった期待はあるのでしょうか
もう既にどんどん新しい商社とか船会社とか支店が出来ています。そうした影響もあり、飛行機の便まで増えています。それぐらい今は洋上風力で賑わい始めています。
——その一方で、洋上風力発電は漁業関係者の方からも協力が欠かせないものとなっていますが、これにはどう向き合うべきだと思われますか
当然協力しながら進めていきます。洋上風力事業に漁船を使うといった収入安定や、発電事業者が漁業者と連携して藻場の再生に関する検討を進めるなど、協力する事例が増えています
——エネルギー価格の上昇がニュースでも大きく報じられています。化石燃料の値段が上がっていく中で、カーボンニュートラルを進めていくには何がどのように影響すると思われますか
化石燃料の価格が上がっているわけですから、カーボンニュートラルの動きは加速するでしょう。日本は化石燃料をほとんど輸入に依存していますから、自分の国でエネルギーを作るということは将来の安定にも繋がると思います。
——ありがとうございました。最後に本学学生に一言お願いします
自分が何を目指しているのか、それを実現するにはどんなことが必要なのかをよく考えてもらいたいです。そうした中で、一生懸命に努力して自分が考えているところに近づいていってくれればいいなと思います。
(津田和弥)
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