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オレンヂカラー

2022年11月23日

 犯罪事件が報じられるたび、インターネット上で事件に対する様々な独自見解が述べられる様相を目にしたことがあるだろうか。それら独自見解の多くは個人の経験や感覚に基づいていて、明確な根拠がないものがほとんどだ。しかしそれらに納得してしまう人が多数いるのが現実である。だか、そのような固定化しやすい独自見解は、気づかぬうちに人々の思考や行動を左右してしまうかもしれない。
 「犯罪心理学」(ナツメ社)では、加害者でも被害者でもない第三者の心理を解明している。同書は社会心理学的視点から犯罪の本質を追究することを主張し、単に犯罪者の内的要因のみに原因を求めることに対し警鐘を鳴らしている。前述の独自見解を犯罪心理学上では「しろうと理論」と呼称されるが、これは決して馬鹿にしているわけではなく、人々がそれぞれ独自に持っている理論という意味である。このような「しろうと理論」は単純であり、複合的な原因によって引き起こされる犯罪の糾明には適さない。人々の考え方に犯罪に対する偏ったイメージが植え付けられるところが「しろうと理論」の怖さである。人間は複雑な生き物であると自覚し、曖昧さを受け入れることが重要だと同書は説く。
 ではそもそもなぜ私たちは犯罪者の心理を知りたくなるのだろうか。それは、犯罪という異常な状況から安心を求める心理がはたらくからだろう。不安を鎮めるために極端で単純明快な理論を求めがちになるのが人間の性である。遺伝や肌の色、信仰宗教など時代や地域によって「しろうと理論」は様々だ。
​ 自分の意見が気軽に発信できるようになった今日、偏見混じりの独自見解が社会におけるステレオタイプの固定化に加担してしまうこともある。投稿前に発信する内容が短絡的で極端でないか見返すべきだろう。 

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