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​入試じわり変化、公正性は

背景に国際化や学部教育

2022年3月7日

 秋の推薦入試を皮切りに2022年度春入試が始まった。本学は近年、「グローバル人材」の育成に力を入れる。入試でも、総合的な英語力や留学経験の有無を判定する制度や、国際基準で学力を評価する国際バカロレア入試を導入してきた。様々な選抜方法を用意する本学だが、高等教育をどう位置づけ、入り口をどう設けているのか。 

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​図=各学部の一般選抜「英語外部試験利用入試」導入年度

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​図=本学の入試制度

 現在の本学の入試形態は大きく分けて10通り(図)。文部科学省の分類では「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「帰国生徒選抜・社会人選抜」となる。細かく見れば、本学の大学入学共通テスト利用入試には3科目型と5教科6科目型があり、一般入試には、一度の試験で複数の学部・学科に出願できる「T日程」、試験日が異なれば複数の学部・学科への出願も可能となる「A方式」、英語外部試験のスコアを利用することで本学独自の英語試験の受験が不要となる「英語外部試験利用」の3種類がある。英語外部試験の利用の仕方は、グローバル教養学部(GIS)では外部試験のスコアに応じて得点換算する形で利用でき、その他の学部・学科では出願資格として利用できる。 

 2022年度入試の昨年度からの主な変更点は、一般入試における英語外部試験利用入試の実施学部拡大と、GISにおける独自の英語試験廃止と英語外部試験の受験必須化だ。 

 

■英語外部、学部拡大 

 一般入試の「英語外部試験利用入試」は現在、15学部中12の学部と文学部英文学科、経済学部国際経済学科が採用。16年度の6学部の導入以降、各学部が徐々に採用した。採用しても募集人員が少ない学部がほとんど。入学センターによると、現時点で同入試に対する全学的な評価はせず、導入のタイミングや利用の仕方は各学部の判断だ。 

社会学部は英語外部試験が定着しているという認識をもとに、22年度から導入した。導入時期に関して特に意図はなく、「今後の様子を見ていきたい」としている。学生の受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)では、他学部と異なり、同入試とT日程・A方式とを区別して、前者では英語の一定の能力を前提に、数学と国語の卓越した学力を主に評価するとした。 

 

■T日程廃止と外部試験必須化 

 GISは21年度入試でT日程の廃止、22年度入試で英語外部試験の受験必須化をした。学部長はT日程について「学部独自の英語問題ではないため、英語の満点が続出してしまった。他科目で合否が決まり、理想と違う」と話す。英語外部試験の受験必須化については「GISの授業はすべて英語。ディスカッションもある。力がないと大変」と話す。共通テストでの英語外部試験導入の議論では、受験機会をめぐる格差の問題が指摘されたが、ここでは「聞く・読む・話す・書く」四技能の判定を重視し、外部試験の信頼性を認めた上で決定した。独自試験では負担が大きいという。 

 

■「グローバル人材」受け入れ 

 各大学や各学部は教育理念やどういった入学者を受け入れるかについての基本方針を「アドミッション・ポリシー」で示している。いわば高等教育を受ける資格を規定するものだが、本学はそこで「学力の3要素」のほかに、国際的な視野をもつ能動的な人材を求めると示している。 

こうした「グローバル人材」を受け入れるための入試制度としては、一般選抜の「英語外部試験利用」のほかに、総合型選抜の「グローバル体験公募推薦」「国際バカロレア利用自己推薦」などが近年導入されてきた。 

文部科学省が主導する「スーパーグローバル大学創生支援事業(SGU事業)」◆の支援対象校となるには、「入試における国際バカロレアの活用」や「外部試験の学部入試への活用」「多面的入学者選抜の実施」などの計画が求められる。本学もこれらの項目に関する計画書を14年に提出。英語外部利用については、23年の同入学者が全体の約28%となること、指定校推薦でも基準スコアを設けることなどを記した。 

経営学部は現時点で、一般入試での英語外部利用は導入せず、自己推薦や公募推薦でグローバル人材受け入れに特化した入試を導入。「その導入効果を確認すべく、(一般入試の英語外部利用は)慎重に検討」している。 

 

■選抜基準の見直し 

 一般選抜と総合型選抜とではどう違うのか。入学センター担当者は「基本的に、一般選抜は基礎学力を重視。総合型選抜では、法政の志望度が高く、学部の教育に合った学生に来てもらいたい」と話す。一般選抜と総合型・学校推薦型等の選抜との比率は、21年度の入学経路で、半数以上の学部でおおよそ半々だ。 

 本学は近年、一般選抜の募集人員を減らしている。例えば、19年度の経済学部の一般選抜募集人員は14年度比約84%、社会学部は85%、法学部は91%だ。こうした変化の一因として入学センター担当者は「SGU事業の一環で、グローバル化に対応した入試を16年度に始めた」と話す。他にも、ある学部長は「18歳人口の減少の影響もあるのではないか」と述べた。ほかの学部長は「確実に入学する推薦入試の学生の比重を上げることで入学定員と入学者数の見込み違いを防ぐ面もある」と説明する。

■脱偏差値宣言=GIS 

 GISの21年度入学生は、約35%が指定校推薦、約31%が自己推薦、約26%が一般入試だ。「帰国生や長期の留学経験者など、日本のカリキュラムで学んでいない受験生もいる。一般入試で知識・能力が測れない人には推薦書や面接を重視している」(学部長)。同様の理由で、日本式偏差値競争から抜けたいという思いも強い。学部長は「国際的な教育を受けた受験生がほとんどにもかかわらず、模試による偏差値でランク付けされ、高い英語力は反映されない。GISは脱偏差値宣言をしたい」と話す。 

 

■まちづくり自己推薦=現代福祉 

 現代福祉学部も推薦入試に力を入れる。福祉コミュニティ学科では、10年以上続いた自治体推薦を改める形で、「まちづくりチャレンジ自己推薦」を20年度から導入。かつての推薦入試は十数カ所の自治体と提携して行い、例年、一定数の入学者がいた。優秀な学生を輩出してきたが、政治色が入る懸念や次第に制度疲労を起こしたことから、自己推薦型へ変更。「動向をみないといけないが、一つの柱になると思う。まちづくりをやる意欲がある、行動を起こした学生を待っている」(学部長)。 

同学部では「ウェルビーイング」をキーワードに、狭義の福祉のみでなく、地域づくりや臨床心理も学べ、実習も多い。「人に関する学問を習得する。人に関心があるかという意味でも基礎学力だけではないものが求められる」(学部長)。 

GISと同様、T日程には苦い面がある。「他学部に入れず仕方なく入る人もいる。学部のねらいを高校側に伝える営業活動も行うようにしている」(学部長)。 

 

■入試と大学での学び 

 GISや現代福祉学部が総合型入試に注力するのは、大学での学びとの関わりを重視した結果だ。社会学部の教授会主任も「英語ができないと授業にならない」と話し、英語の素養があることは大学での学びの前提だとする。 

他方、本学入試で数学が必須ではない「文系学部」でも、近年は、統計や数理分析を用いる研究分野がある。A方式の選択科目として、日本史や世界史などではなく数学を利用する受験生の割合は、21年度のスポーツ健康学部で約3割、経済学部で約2割、経営学部で2割弱、人間環境学部、現代福祉学部、キャリアデザイン学部では約1割だ。 

数学必須化の議論について、社会学部は「総合的に判断して現実的ではない」と考えを示す。経営学部でも、数学必須化の積極的な議論はない。経営学部長は、数学の知識が必要な分野が存在する一方、カリキュラムでは数学系の科目を必修としていない点を示し「学科間の垣根が低く、多様な学びを得やすいことが当学部カリキュラムの特徴」と説明する。また、法学部長は「重要なのは、入学してきた学生をどう育てていくか」とする。

 

■入試の体制整備 

 入試の業務をめぐっては、作問などを教員が担当することから「諸外国の大学からみれば、大学教員が入試体制に動員されて時間を取られていることは、信じがたいだろう」という声が学部長のなかにある。入試方式がこれ以上多様化することについても、教員の負担の面から複数の学部長が消極的だ。本学に限らず入試改革の議論では、入試の専門性や教員の研究・教育時間確保の議論も無視できない。 

 

■オンライン英語対策講座 

 本学が河合塾の講師を招いて行う英語対策講座は、入学センターによると少なくとも10年以上続く。12年から、市ヶ谷キャンパスに加えて首都圏の河合塾の校舎でも、17年からは各地の河合塾の校舎でも開かれ、規模を拡大。16年には小金井祭に合わせて英語と数学の対策講座が開かれた。昨年と今年はオンラインで開催。受験生の不安解消と本学志望者の増加をねらう。 

◆SGU事業◆ 

徹底した大学改革と国際化を進める大学を重点的に支援する文部科学省の補助事業。公募で採択された大学のみが支援対象となる。 

(髙橋克典)

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