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図書館、新システムの運用検討

法学部懸念示す

2021年3月5日

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手前の建物が本学多摩キャンパスの3号館(図書館・研究所棟)。

 本学図書館は、利用者の貸出と返却の履歴を保存できるようにする新たなシステムの運用を検討していることが、大学関係者への取材でわかった。保存する方式は、希望者のみが履歴を保存できる「オプトイン方式」とした。2021年度からの運用を目指す。法学部は、プライバシー保護の観点などから懸念を示している。

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オプトイン方式と履歴の照会と削除に関する図。なお、ライブラリーカード発行者のうち兼任講師と通信教育部生は、利用資格喪失から1年間は履歴を保持しその後破棄する。卒業生やキャンパス周辺の住民、山手線沿線私立大学コンソーシアム利用者などの学外者は利用資格喪失時に履歴を破棄する。

 

 本システムでは、希望者に限り本学のOPAC(オンライン蔵書目録)から貸出と返却の履歴を照会できるオプトイン方式を採用した。履歴を保持する設定を行うことで返却後も貸出履歴を確認できる。現行のシステムで照会できるのは、貸出中と予約状況のみだ。

 履歴の保持を取りやめた場合、データは破棄され復元は不可能になると図書館は説明している。しかしプライバシー保護の観点から図書館のサーバーに履歴を保存することは望ましくないと考え、法学部教授会は懸念を示した。

 ライブラリーカードを発行した人も履歴を保存する対象だ。卒業生やキャンパス周辺の住民、山手線沿線私立大学コンソーシアム利用者など学外の者も含まれる。

 

 常務理事側は、本システムを導入する理由として「『貸出履歴の照会ができると、卒業論文やレポートの作成に役立つ』という要望が教員や学生問わず寄せられた」ことを挙げた。しかしどれほどの教員と学生が要望を寄せたのかという具体的な数字は明らかになっていない。東京大学や一橋大学、立教大学などの他大学でも類似したシステムを導入していることも理由として挙げた。

 本システムの導入は2018年3月に常務理事会で承認され、同年8月に運用が始まる予定だった。当初の提案では、設定を行わないと自動的に履歴が保存される「オプトアウト方式」をとっていた。しかし「警察などの求めに応じてデータが提供される可能性がある」「思想及び良心の自由が侵害される恐れがある」などの懸念もあり見送られた。

 2018年の法学部教員のコメントによると、2013年頃にも本システムに酷似したシステムの導入が検討されていた。しかし当時の学部長会議で「必要と判断すれば、蔵書の閲覧履歴を警察に提出することもある」と断言されたこともあり導入は見送られた。

 法学部某教授は「貸出履歴は重要なプライバシー情報。記録すること自体が不要だ」と語る。一方で同学部の他の教授は「自らのプライバシーを本人が有益に利用することには賛成できる」と話すなど、好意的な意見もあった。

 本学法学部4年は「貸出履歴を保存するのはいいが、返却履歴には抵抗感を覚える。私はよく返却を延滞するため、履歴から『要注意人物』と扱われないか」と危惧した。同学部2年は「警察など第三者に提供される可能性があるのは、目的によっては不快に感じる」と否定的だった。

 しかし文学部3年は「卒業論文を書くために大量の資料を借りるため便利だと思う。自分で管理することができるならプライバシーは気にならない」と歓迎した。経営学部2年は「履歴を保持するかどうかを自ら選択できるなら賛成できる」と話すなど、肯定する声もあった。

 本学市ヶ谷図書館事務課は本紙の取材に「今後内容が変更される可能性があるため、正式に情報が公開されたあとに取材を受けたい」とし、現時点ではコメントしていない。

(宇田川創良)

 

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