多摩 防災シンポジウム開催 

都と共同事業の実証実験報告も 

2021年4月7日

3月13日、本学多摩キャンパス現代福祉学部棟(17号館)301号教室とビデオ会議システムZOOM上で、シンポジウム「CAMP in Campus 自然災害時の避難生活の代替案の提示」が開催された。当日は教室、オンライン含め本学学生と教職員等、30人ほどが参加。避難所生活の課題点と災害時の大学施設活用について講演と東京都との共同事業の報告、グループディスカッションがあった。 

「“CAMP in Campus for well-being”大規模災害時の人間らしい避難生活をキャンパスで」は、2020年度、本学と東京都との連携で実施されている共同事業。本シンポジウムはその報告会に当たる。代表者の本学現代福祉学部長の水野雅男(みずの・まさお)教授、共同事業者の東洋大学国際観光学部の佐野浩祥(さの・ひろよし)教授、東京工業大学環境・社会理工学院建築学系の坂村圭(さかむら・けい)特任助教の3名を中心に、数回にわたり行われたオンラインでの勉強会が行われた。 

また同年度11月には本学多摩キャンパスで災害時の避難生活を想定した実証実験(関連記事:https://www.hoseipress.com/article2020no1/20201108)も行っていた。 

 

シンポジウムは、地区防災計画学会会長・兵庫県立大学大学院の室﨑益輝(むろさき・よしてる)教授による基調講演「我が国の避難所の実態と問題点」、水野教授による調査研究報告と政策提言「大学キャンパスを避難生活拠点に」、室崎教授による講評、グループディスカッション、総括の順に行われた。 

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基調講演は兵庫県からZoomを用いて行われた(撮影:西森知弘) 

基調講演で室崎教授は、阪神淡路大震災以降の大規模災害発生時、在宅避難での被災や避難のための移動途中での被災、避難所での被災や二次災害など、災害そのものによる被災だけでなく避難災害も発生していることに注目した。原因として避難所の立地や安全性、環境を挙げた。行政の避難所の運営基準の元になる災害対策基本法で定められている避難所の設営期間の目安が1週間であるのに対し、阪神淡路大震災では半年、東日本大震災では7カ月から9カ月と長期化しており、想定と実情の乖離を指摘した。避難所の役割として、病院のように被災した人々を傷ついた状態から元気にして、日常に復帰させることにあると語った。日本の避難所は、避難者をただ収容するだけでなく、被災者の生活空間として医療、仕事、住環境、教育、交流、自治など、ハードとソフトの両面から様々な機能を備えるべきだと述べた。 

水野教授の報告では、日本の避難所では難民キャンプで最低基準とされるスフィア基準を大きく下回る劣悪な環境で避難者に忍耐を強要し、熊本地震での災害関連死者数が直接死の4倍である220人に上ると指摘した。さらに地域コミュニティ基盤は都市部を中心に自治会参加率の低下で機能していないことにも注目。そして指定避難所は感染症対策で収容能力が低下し、避難所運営は、収容した避難者全員分が揃わなければ配布しないといった、行政主導の硬直化した対応による支援の不備を指摘した。課題解決のため、大学施設を利用したテントでの屋外避難や家族単位での避難、避難生活の日常生活化、情報収集の選択肢の提供や民間・市民団体含めた多様で柔軟な避難所運営を実証実験のフィードバックを交えて提言した。

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ワークショップでは教室とZOOMを活用して本学学生や教職員だけでなく東京工業大学の学生と教員も参加。(撮影:西森知弘) 

グループディスカッションでは①人間らしい避難生活とは、②多様な人々を受け入れるには、③避難所をどのように運営するかの3グループに分かれて学生、教職員入り混じって議論した。自主防災組織の形骸化や大学での避難訓練等の課題点や、専門的な知識を一定程度持つ学生が多数所属する大学という共同体のポテンシャルが論題に挙がった。職員からは被災者の受け入れの判断や国内外での実例の有無など現実的な課題点が挙げられた。学生からは登録団体の講習会等を利用した半強制的な避難訓練やハンドブックでの周知、ボランティア学生による非常時対応への主体的な活動など積極的な行動案が挙げられた。 

 

参加者の中には同日まで行なわれていた水野教授のスプリングセッション「大規模自然災害発生時の大学キャンパスでの避難生活のデザインワークⅡ」の参加学生や中央省庁で防災を担当している卒業生もおり、所属に関わらず防災に関心のある人々が参加していた。 

(西森知弘) 

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シンポジウム後に行われたデザインワークの発表会。3班に分かれ、それぞれ避難所で使用するベッドの試作品の製作報告を中心に、避難生活での人間らしさについて追求した。 (撮影:西森知弘) 

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スフィア基準と日本の避難所の実態について。水野教授の発表スライドより。