検査5万6500円「ぼったくり」中国の検査は無料

法学部4年中国人留学生 宗さん

2021/02/09

  昨年12月、3カ月後に控えた卒業式の出席を断念した中国の留学生がいる。千葉県に住んでいた法学部政治学科4年の宗(ゾン)さん(23)は、新型コロナの感染拡大が収まらないことを危惧して中国への帰国を決めた(本人の希望により苗字のみとした)。12月上旬に1月27日の飛行機を予約し、成田国際空港から中国の山東省にある青島流亭(チンタオリュウテイ)国際空港から入国した。両国でのPCR検査や中国での宿泊療養について語った。

法学部政治学科4年の宗さん

=オンライン会議システム

「ズーム」のキャプチャー画像

中国山東省。華北地区東部沿岸の省

 帰国にあたっては、中国政府の求めに応じて、出国予定の27日の2日前にPCR検査と血清検査を受けることにした。中国大使館から指定された医療機関のうち、家から電車で1時間程度と近いクリニックで受診することにした。クリニック内には、スタッフ10名ほどと患者15名ほどがいたものの、広々としていて窮屈さは感じなかった。

帰国するにあたって必要なPCR検査と血清検査の診療明細書。

結果は陰性だった

=一部加工

 5万6500円。診療明細書にある合計額だ。事前予約をしていたが、千葉の自宅の電気と水道の解約の手続きで1時間遅刻したため、通常料金の3万2500円に時間外として1万4000円が加算された。「ぼったくりですよね」と宗さんは話す。費用は全て自腹で、中国政府や日本政府、もちろん大学から支援などはない。

 

 PCR検査では、白く細長い綿棒のようなものを鼻の奥に入れられた。痛みよりも、激しいかゆみが鼻の奥を襲った。思わず涙が出てしまうほどの強いかゆみだった。その後の血清検査では、右腕のひじの内側から15mlが採血された。検査は無事終了し、電車で帰路についた。

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宗さんが乗った機内の様子。ソーシャルディスタンスが保たれており、乗客は100人程度だったという=プライバシー保護のため一部加工

 その2日後の27日、午前9時50分に成田空港で飛行機に搭乗し、午後1時30分に青島空港に到着。飛行機内では、皆が間隔を空けて座りマスクやフェイスガードをきちんと着用していて終始落ち着いた様子だった。青島空港に着くと、空港職員が一般的なものの数倍の大きさのアルコール容器を持って、乗客のすべての荷物にアルコールを吹きかけていた。

ホテルの部屋の様子。宿泊療養なので部屋の利用客は一人だがツインベッドだ

 青島空港でもPCR検査と血清検査を受けたが、どちらも無料だった。その後空港からバスに乗り30分ほどかけて海に面した宿泊療養施設「中国気象局青島度仮村(青島リゾート)」へ。一般市民にはなかなか手が出ない値の張るリゾートホテルが療養施設として使われている。中国政府は、コロナ禍で観光客が減った高級ホテルを中心に、リゾートホテルなどを療養施設として利用することでその経営を支えているからだ。

ホテルに到着した直後、室内から撮影した外の様子。外にいるのは警備員で、外出をする人がいないかを見張っている

 療養施設での生活は窮屈だ。ホテルの内外問わず警備員が巡回しており、どんな理由であれ外出すると逮捕される。3日に1回PCR検査と血清検査を受けなければならないため、水以外の飲み物は飲むことができない。

出された弁当の一例。

山東省の料理特有の塩辛さは、日本の中華料理屋ではなかなか食べられないという。

このほかにもデザートがつく

 1日3食すべてが弁当で、ホテルの廊下にある椅子の上に置かれる。肝心の味は「そこそこの味」と宗さんは顔をほころばせた。毎食すべて、学食の「勝つぞ法政」と同じくらいの大ボリュームだという。ほかにも1日にりんご1個とみかん3個が置かれるなど果物が日替わりで出てくる。「果物まではなかなか食べ切れない」とりんご2個とみかん6個を見せながら笑った。

 この療養施設を利用するにはお金が必要になるが、強制的に割り振られるホテルごとに料金が異なる。宿泊費や食費すべて含めて1日あたり420元(約7000円)で、2週間の療養だと10万円近く支払わなければならない。宗さんは家族から送金をしてもらい工面した。

大量に積まれた2週間分の水とトイレットペーパー。

足りなくなった際は追加してもらえる

ホテルの廊下。食事は椅子の上に置かれ、椅子の下にその日のゴミを入れた黒い袋を置くと回収される。

廊下の奥の天井に、黒い半円形の監視カメラが設置されている

 ホテルの廊下には勝手な外出をしないよう監視カメラが設置され、精神的にも窮屈な状況だ。「中国は多くの国民に対してPCR検査を複数回しているが、それでも収まっていない」と長期化する感染拡大を憂う。2週間の宿泊療養が終わる2月10日には、政府が用意した車に乗って同じく山東省にある実家まで帰ることになっている。

 実家に戻ってからも1週間は自宅待機で、同じ家に住む家族全員も必ず1週間の自宅待機をしなければいけない決まりがあるため、療養は17日まで続く。待機後は家族全員がPCR検査と血清検査を受け、問題がなければ自宅待機は解除される。

 宗さんは、政治学科生だが法律学科科目を積極的に取り、卒業時には卒業所要単位の132単位を大きく上回る180単位を取得する予定だ。これからは中国の司法試験に向けて研さんを積み、9月には中国の金融機関で働き始める。職場で学ぶ経済の知識を生かし、いずれは地方政府の政策研究会や行政不服審査会などで有識者の一員となり「世の中の正しさ」を問い続けたいと話した。

(宇田川創良)

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