兼任教員「これが法政のやり方なのか」

授業打ち切り伝える御礼状

法学部長「対応策考える」

2020年12月7日

  法学部政治学科では、昨年度から同学科で始まった「カリキュラム改革」を理由に、佐々木央(ささき・ひさし)兼任教員が担当する「NPO論Ⅰ」という授業は本年度末までで打ち切りが決まった。7月30日、中野勝郎(なかの・かつろう)法学部長が「御礼状」という名前の通知で閉講を伝えた。佐々木氏は「唐突であり、理由も明示されず、手続き経過も不明で、全く理解できない」とし、本年度秋学期からの出講を辞退した。

 政治学科のカリキュラム改革は、中野氏が「専任教員の授業をあまり取らず、兼任講師の授業を多く履修して卒業する政治学科生が多い」と感じたことから始まった。現在、本学の政治学科の趣旨をよく理解する専任教員の授業を中心に履修してもらえるようカリキュラム編成を進めている。この改革について当局から学生への説明はない。

 授業数を削減する「スリム化(※1)」が19年度から全学部を対象に本学で始まった。科目数の多い政治学科は「科目数が多すぎる」との批判から授業数の削減が進み、9つの科目(※2)が廃止されることが決まった。この背景を追う。

中野勝郎法学部長=写真は本人提供

 これが法政のやり方なのか
 佐々木氏は「NPO論Ⅰ」を2016年度の春学期から担当していた。本学シラバスの説明では「具体的なNPOの活動を素材にしながら、情報・民主主義・NPOの関連を学び、社会をよりクリアに見る目を養います。あなたのこれからの生き方や社会へのスタンスに、決定的な見直しを迫るものとなることを目指します」とある。昨年の授業登録者は約40名で、単位を修得したのは30名ほどだった。

 

 「授業終了後、『これほど双方向の授業は法政に入って初めて』と言う学生もいた」と佐々木氏は話す。「NPOは『参加』の仕組みであって、民主主義を支える重要な装置だ」と話し、政治学との関連性の高さを強調した。

 一方的な通知で反論の機会が与えられなかったことに関して「ほぼ説明のない絶縁状で打ち切りを伝えられた。これが法政大学のやり方なのか」と閉講までの手続きについて憤った。

 昨年授業を受けた4年の学生(法・国)は「授業全体を通してNPOにあまり触れなかった」とした上で、「毎回一人ひとりのコメントにフィードバックをくれて、有意義な授業だった。先生自身も毎週学生と交流できるのを楽しみにしていたようだったので残念」と閉講を惜しむ。同じく3年の学生(法・政)は「私はあまり出席しなかったが、とにかく自由で楽しかった」と話す。

 なぜNPO論Ⅰは打ち切られた
 NPO論Ⅰを閉講にした理由として、中野氏は「兼任教員が担当する授業を減らすのが大原則としてあった」と話す。専任教員の授業を受けずに卒業する政治学科生が多いと感じたからだ。加えて専任教員は、担当する授業コマ数が本学の学則によって決まっているが、兼任教員は決まっていない。政治学科のカリキュラム改革として、まず兼任教員が担当する授業から閉講の対象にした。

 

 閉講する授業を決める際、主に専任教員で政治学科科目の「優先度」を話し合った。その中でNPOという領域は、政治学特講などの授業の一部で取り扱うのはよいが政治学科科目として常に置かなくてもよいと判断した。その授業の内容や受講者数で判断はしていない。判断の際、学生や兼任教員の介入はなかった。

 法学部某教授は、「『NPO論Ⅰ』はなくなるが、名和田是彦(なわた・よしひこ)教授が担当する『コミュニティ論』によって内容はカバーする。学生が不利益を被らないようにする」と話す。2つの授業を1つにまとめることで、兼任教員が担当する授業を減らし、専任教員の授業を残した。

 学部長「対応策考える」
 閉講までの過程を示さずに御礼状として伝えたことに中野氏は「これによって法学部に不信感を持つ先生がいるとしたら、我々は受け止め、対応策を考えなければならない」と語った。御礼状という名称については、「『御礼状』として伝えるほかない」とこぼす他の学部長もいた。

 

 閉講を伝えた7月30日という時期について中野氏は「開講または閉講のどちらの通知も、例年この時期に行っている。これが遅いということであれば、その批判は受け入れる」と話した。

 

 「NPO論Ⅰ」は、専任教員含む政治学科の話し合いで優先度を理由に打ち切られた。法学部の兼任教員への授業依頼の契約期間は1年間もしくは半年であり、契約が更新される場合とされない場合がある。中野氏は、佐々木氏についても「同様の手順の対応をした」と話した。しかし佐々木氏は「任期について特に通告も合意もなかった。契約書はなく、身分証明書も交付されなかった」と話す。

 

 政治学科では、このほかにも「楽単(単位の修得が楽な授業の意)」や「政治学との関連性の薄さ」などを理由に閉講が決まった授業が複数ある。その授業の担当者に取材を申し込んだものの「『カリキュラム改革』について何も知らない」ことを理由に断られた。前もって兼任講師に丁寧な説明をしない限り、専任教員と兼任教員との間に溝を生みかねない。
 

(宇田川創良)
 

 2020年7月30日、佐々木央兼任教員に届いた「御礼状」の全文は以下のとおり。差出人は中野勝郎法学部長。

御礼状_730.jpg

7月30日、佐々木氏に届いた御礼状

=文書は佐々木氏提供

謹啓 梅雨の候、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は本学法学部の教学にご協力いただき、心より感謝申し上げます。

 

 さて、法学部政治学科では、2019年度よりカリキュラム改革を検討して参りました。その結果、2021年度より新カリキュラムに移行するにあたり、2020年度をもちまして、「NPO論Ⅰ」を閉講することになりました。それに伴い、先生にはこれまで、本学の教学に多大なるご貢献をいただきましたが、本年度3月末をもちまして、本学部でのご担当が終了することになりました。

 これまで本学の教学にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。先生のご貢献がなければ、私どもの教学は十分にはその責めを負うことができませんでした。先生のこれまでのご尽力に感謝いたしますとともに、今後のご活躍を祈念する次第でございます。

 本学部を代表して厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

敬具

※1 スリム化(昨年12月時点の情報)
 授業科目数を見直すことで本学の教室のキャパシティに余裕を持たせるため、既存のカリキュラムや授業を見直す改革の名称。19年度より一斉に全学部を対象として始動した。20年度よりILAC(市ヶ谷リベラルアーツセンター)科目も対象となる。

 この改革の最大の特徴は少人数科目の削減だ。少人数科目を削減するまでの過程は以下のとおり。履修者が10名以下の科目は原則として翌年度に「重点確認対象科目」となる。翌年度も履修者が10名以下となった場合、閉講または隔年開講の措置となる。なお、5名以下の場合はその年度から、6名から10名であればその次の年度からの措置となる。必修科目とゼミはスリム化の対象外だ。

 履修者が10名以下の科目であっても、実習の関係上5名までしか提携先で受け入れられないなど、少人数での授業が求められる科目も対象外となる。他に対象外にすべき科目がある場合は、各学部等の授業担当組織ごとに「例外科目」を設定し、スリム化の対象外とすることが可能。

※2 以下の9つの政治学科科目が来年度から廃止される。
「ジャーナリズム実践講座」、「フェミニズム思想Ⅰ・Ⅱ」、「現代メディア論」、「宗教文化論Ⅰ・Ⅱ」、「政治意識論Ⅰ・Ⅱ」、「生命政治論Ⅰ・Ⅱ」、「歴史政治学」、「A Short Introduction to Japanese Politics」、「NPO論Ⅰ・Ⅱ」。

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