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2019年実践知大賞受賞 植物医科学センター

植物病を防いで人類に貢献する研究

昨年度、植物医科学センター(植医センター)が実践知大賞を受賞した。評価されたのは創設時(2014年9月)から現在までの教育・研究は元より生産現場から依頼される病害虫診断や学内外での技術指導・研修会等を通した社会貢献の実績。授賞式では石川成寿(いしかわ・せいじゅ)教授(植医センター長)が東京都青梅市で発生したウメの病気について学生とともに取り組んだ現地での診断・防除の活動実態を披露した。受賞した同センターについて生命科学部応用植物科学科の渡部靖夫(わたなべ・やすお)教授(生命科学部長)、石川成寿教授、津田新哉(つだ・しんや)教授(応用植物科学科主任)に取材した。

実践知大賞受賞|法政大学新聞1048

左から津田新哉教授、渡部靖夫教授、石川成寿教授。石川教授が持つのが実践知大賞の賞状で、渡部教授と津田教授が持つのが副賞のえこぴょんと受賞トロフィー=西森知弘撮影

本学では、2008年の学部再編時に既存の工学部を現代社会のニーズに合わせて、理工学部、生命科学部、情報科学部、デザイン工学部の4学部に再編成した。そのうちのひとつである生命科学部は環境応用化学科、生命機能学科、応用植物科学科の3学科から成る。

 

環境応用化学科は生命科学を中心に世界全体の環境問題を化学的アプローチから解決することを目指し、物質創製化学コース、グリーンケミストリコース、環境化学工学コースをおいている。生命機能学科は大まかには理学部の生物学科に近く、生物の現象など生命の基本的な事象を捉えて生物学の知識から地球上の問題解決を図ることを目的に、ゲノム機能コース、蛋白機能コース、細胞機能コースを設置している。
 

そして今回実践知大賞を受賞した植医センターが設置されている応用植物科学科は植物の医者を育てることを目的に、植物クリニカルコース、グリーンテクノロジーコース、グリーンマネジメントコースの3つのコースを置く。「人間や動物の医者を育てる学校は多いが植物の医者を育てる学校はほとんどない。今から10年前に植物の医者を育てることを目的に創設された」と渡部靖夫教授は話す。植医センターは病気にかかった植物が持ち込まれると、その原因を究明、現地での被害拡大防止を指導する。
 

研究内容は農学部の植物病理学、植物生理学、植物害虫学が中心。応用植物科学科のある小金井キャンパス東館5階は、土の消毒を行う大型の機械や温室、実験室があり、学生は教員の指導の下、土作りから植物の栽培、病害虫関連の実験までを幅広く学ぶ。植医センターの活動に参加する学生は、実験室という狭い範囲に閉じ込もることなく、生産現場で起こる植物病を克服する実践の場として教育を受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

植医センターの目標は植物病に関する諸問題を解決し、社会に貢献することを目指すというもの。一例を挙げると、世界で生産される穀類のうち、貯蔵・移送中に発生する病害虫等の被害に発展途上国では半分が、先進国ではその3割が失われる。しかしながらその防除対策は遅々として進んでいない。食料となる農作物の生産性や収量向上に加え、病害虫等の防除技術の開発は世界の食料問題の解決に大きく貢献する。その研究を追求することにより、最終的には人類を救う研究になり得ると石川教授は熱く語った。植医センターの受託診断は、園芸業者や農家から依頼を受けた教員らが授業や研究の隙間を見つけて対応している。いずれは専属の植物の医者を配置した植物専門の大学病院へと発展させる構想を抱く。

(西森知弘)
 

小金井キャンパス東館5階にある温室|法政大学新聞1048

小金井キャンパス東館5階にある温室。1月末の取材時には江戸野菜の小松菜などが栽培されていた=東京都小金井市、西森知弘撮影

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