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自然との共生に「工夫」を

キャンパスにカラスの大群

本学多摩キャンパス(東京都町田市)には、夕暮れとともにカラスの大群がやってくる。カラスは都市部にも生息する身近な野生動物の一種で、鳥獣被害の代名詞とも言われている。しかし、多摩キャンパスではここ1年間、カラスによる被害は確認されていないという。そこには、多摩キャンパスのごみ箱の特殊な形状が関係していた。餌の不足や生息域の縮小によって人里へやって来る野生動物が増えてきている今、自然環境との付き合い方を見直す必要がある。

【写真】鳥獣被害|法政大学新聞1048

建物の上にカラスが集まる様子。100羽以上が一斉に飛び立っている

=多摩キャンパスで、木村優吾撮影

周囲を自然に囲まれた多摩キャンパスには、カラスの食料となる生物が多く生息しており、繁殖しやすい環境が整っている。カラスは3月から7月が繁殖期で、8月以降は群れを作る習性がある。そのため秋から冬にかけて、多摩キャンパスには数えきれないほどのカラスが姿を見せる。雑食性で、ごみを荒らして食べることもあるカラスは、はた迷惑な鳥としての印象が強い。しかし、多摩キャンパスに現れるカラスは大人しい。


これは多摩キャンパスがカラスに餌場として認識されていないためだ。理由の一つは、多摩キャンパスにあるごみ箱の形状だ。多摩キャンパスにあるごみ箱は、側面の隙間からごみを入れられるようになっており、上からではごみ箱の中身が見えない。カラスは視覚を通して餌を探すため、ごみの存在がカラスに見えないよう隠されていれば、ごみ箱を荒らされずに済む。


ここ数年、カラスへの対策について研究が進められている。鳴き声を応用して追い払う実験が行われるなど、カラスの特性を踏まえた様々な対策が考えられている。鳥獣被害の相談や対策を請け負う相模原市環境経済局環境共生部は、カラスには黄色のものを認識できない特性があると話す。黄色のネットを使うことで、ごみ捨て場へカラスが寄り付かないようにすることができるのだ。


カラスの群れの出現は、鳥獣被害の危険を孕んではいるものの、見方を変えれば自然が豊富な証とも言える。同局は本紙の取材に「迷惑だからカラスを駆除するのではなく、上手な付き合い方を考えていく必要がある」と語った。宅地造成による生息域の縮小や、餌の不足が原因で人里に現れる野生動物は少なくない。残された自然と共生するため、やって来た野生動物を「迷惑」にしない、適切な工夫が求められている。

(木村優吾)

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