陸前高田市と協定結ぶ
SDGs関連、下川町に続き2例目
昨年12月12日、本学九段校舎にて「持続可能な開発目標(SDGs)推進に係る陸前高田市と法政大学の協力に関する協定書」の締結が行われた。本学が地方自治体とSDGsの関連で協定を結ぶのは北海道下川町に続いて2例目。
締結式には本学から田中優子総長、廣瀬克哉副学長、平山喜雄教育支援統括本部長・学務部長が、陸前高田市から戸羽太市長、齋藤晴美福祉部長、本学卒業生でもある畠山恵美子市議会議員が出席した。

協定締結式の出席者。左から陸前高田市の畠山恵美子市議会議員、同市福祉部の斎藤晴美部長、戸羽太市長、本学の田中優子総長、廣瀬克哉副学長・常務理事、平山喜雄教育支援統括本部長・学務部長
=2019年12月12日、西森知弘撮影
式では協定の概要と目的について廣瀬副学長から説明があった。陸前高田市では2011年の東日本大震災で文書庫が浸水し、議会の書類が汚損した。本学では復旧作業の一部を行い、当時の市議会議長と本学総長との間で文書復旧に関する協定が結ばれた。また現代福祉学部の宮城教授による陸前高田地域の再生支援計画プロジェクトや、チーム・オレンジによる学生の現地のスタディーツアー、復興支援のボランティアなど陸前高田市をフィールドとして実施している。現在、陸前高田市では震災によって壊滅的な被害を受けた地域の都市復興計画を経済、社会、環境の3つの側面から推進している。その取り組みが認められSDGs未来都市に選定された。SDGsについて宣言を出した本学もSDGsを共通の分母として社会貢献に取り組みたいと語った。
その後、協定書の署名と記念撮影、今後の取り組みについて戸羽市長と総長から会見があった。総長は会見で、18年のSDGsに関する総長ステイトメントを引用しながら、陸前高田市をフィールドに本学学生が主体的に考える機会を設けたい、それが学生自身の能動的な知識に結びついていくと話した。
質疑応答では、弊紙から陸前高田市側に、SDGsの職員や市民への広がりについて質問した。それに対し斎藤福祉部長は、「市長によるノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくりという目標の中で、高齢者、障がい者を含め、あらゆる人が生きにくさをなくしていくことを目指している」。戸羽市長は、「地方の弱い公共交通機関を例に、地域を持続可能にするために、他の地域や企業の手も借りて課題解決していきたい」と答えた。
式終了後、学生と市長による対話フォーラムが行われ、戸羽市長は学生ら8人と、「市民が市内で生活し続けていくうえで必要なもの」について話し合った。学生らは事前学習会で学んだことを生かしながら、郷土愛や交通の流動性、病院など一人一人がそれぞれ必要だと考えたものを市長に話した。
なお本学では今年度より陸前高田市とSDGsに関わる新たなフィールドワークなどを企画している。
(西森知弘)

締結書を掲げる陸前高田市の戸羽太市長(左)と本学の田中優子総長(右)=2019年12月12日、西森知弘撮影
▼市長会見内容要旨
今回SDGsという切り口で協定を結んだ。SDGsは個々の目標はわかりやすいが、全体では難しい。特にSDGsの中でも必ず出てくるのが持続可能だ。我々のような小さな、そして東日本大震災で被災したまちが復興を目指して頑張っているが、本当の意味でどう持続可能なまちに作り替えていくかは大きな挑戦だ。陸前高田市の人口高齢化率は39%、100人市民がいれば約40人は高齢者という中で、どう持続可能なまちにするかは日本の縮図、未来の縮図だ。畠山議員や田中総長も女性だが、日本全体での平均を考えても我々の市はジェンダー平等を目指すというSDGsの話とは程遠い状況にある。この状況を踏まえ、ジェンダー含め、地方における課題をどのように解決していくか、どうビジネスにつなげていくかが我々にとっての大きな課題、挑戦だ。法政大学は大学の持つ切り口で全然かまわないが、学生の皆さんも陸前高田市に来て都会から見た田舎の良さを知ることからまず始めていければ良い。レールに沿ってやるのは面白くないので、東京の私立大学と私たちのような田舎が組んだ時にどんな化学反応が起こるのか、非常に私としては楽しみにしている。課題先進地というと地域の人に怒られるが、現実のところは私たちのところは課題先進地であると言わざるを得ない。そういう問題を一つ一つクリアしていくと同時に、これが、いわゆる安倍内閣の「まち・ひと・しごと創生」にしっかりと結びついていくよう模索したい。