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「とつけむにゃー(とつけもない)」。熊本の方言で、「とんでもない(程度が甚だしい)」という意味だ。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」が、大河ドラマの歴代最低視聴率を記録した。文字通り、とつけむにゃー。低視聴率の原因として、主人公が政治史で名を遺した人物ではないこと、近代がメインで雰囲気が今までと異なること、物語の中で時系列が前後し混乱することなどが考えられる。

 

▼視聴率が悪いからとはいえ内容が悪いわけではない。金栗四三(かなくりしそう)・田畑政治(たばたまさじ)という二人の主人公とオリンピックの物語が中心でありながら、当時の出来事や、関東大震災・第二次世界大戦を経験しながら懸命に生きた人々の姿が描かれている。近代が取り上げられた点、教科書に名を残さぬような一般市民の様子を克明に映し出している点が、歴代の大河ドラマとは一線を画す。所々に入るコミカルな要素も魅力の一つだ。

 

▼一般に知られている視聴率は「世帯視聴率」であり、全国27地区で調査されている。ある時間帯にその番組をつけていた世帯数から計算されたものだ。関東地区では900世帯、関西地区と名古屋地区はそれぞれ600世帯からデータを収集している。だがこれは、人数や細かな状況は加味されない。また、録画やネットで視聴した人々も対象外になる。

 

▼番組の良さは、「視聴率がとつけむにゃー」そんな単純な言葉で判断してよいものか。情報化社会の中で、私たちは日々多くの情報に囲まれている。他人の口コミやランキングに踊らされ、本当に大切なことを見失うかもしれない。大切なのは、情報の本質を自分自身で判断し、取捨選択することである。「いだてん」で日本やオリンピックの歴史を振り返りながら、考えられることとは。(小林真冬香)

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