防大生に学ぶ不屈の精神

同世代の学生を見つめて

京急本線終点の一つ前、馬堀海岸駅よりタクシーで5分ほど。青い海を望み、小原台に位置するは防衛大学校(神奈川県横須賀市)。ここは幹部自衛官を育成するための防衛省の機関であり、第1学年から第4学年までの学生が週5日、朝から晩まで、定められたスケジュールの中、授業や訓練をこなしながら多忙な日々を過ごしている。なぜ彼らはこのような厳しい道に進んだのか。

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気さくに取材に応じた、左から野坂真仁氏、大谷愛理氏

今回取材に応じた第4学年野坂真仁(のざかまさと)氏、第3学年大谷愛理(おおたにあいり)氏は、共に2011年3月11日に発生した東日本大震災が、今の道につながるきっかけだと語った。この震災で自衛隊の存在や活動、組織を認知し「人の役に立つ仕事がしたい」と思い、防大に入校した。また大谷氏は全寮制という特徴を生かし「自分自身が大きく成長できる場になる」と思い、防大を目指したとも話した。


 防大は本学と違い、全寮制である。部屋は第1学年~第4学年の各学年2~3名ずつ、計8名が共同で使う。部屋替えは年に3回ある。校内は制服着用で、第1学年のみ外出時も制服着用が義務化されている。他にも第1学年時には8キロメートル遠泳、第2学年時には防大伝統のカッター競技会など、季節や学年ごとに様々な訓練や競技会が行われる。また校内にはコンビニエンスストアやプール、体を鍛えるウェイト場などあらゆる施設がある。


 取材をしている途中、突如ラッパの音が鳴り、国歌が校内外に響いた。「国旗降下」の間、学生は会話や動作を止めた。法大生が普段の生活ではめったに耳にしない国歌が、ここでは朝夕の2回決まった時間に流れている。


 このように、防大での生活は、多くの人が一般大学で送っている学生生活とは異なる。だが、防大で生活しているからこそ得られるかけがえのない経験がたくさんある。


 大谷氏は「どんなに秒刻みな生活を送っていても、少しの工夫で時間は作ることが出来る。だから足りない時間はない」と述べた。また彼女は儀仗隊(※ぎじょうたい)という校友会(一般大学におけるクラブ活動)に属しており、その活動の中で「小さな変化は大きな変化につながる」ことを学んだという。「行進の際に手の振りかた一つで全体の統一感が変わる。それを意識してから普段の生活の中でも、物事を小さいことからコツコツ取り組むようにしている」と話す。彼女は当時の儀仗隊隊長である学生から言われた「女子学生でも儀仗隊を諦めることはない」という言葉に奮起し、当時の儀仗隊では数少ない女子学生として日々練習を重ねた。今では約4・3キログラムの銃をほかの儀仗隊員である学生と同じように、自由に操れるほどになった。彼女の根気強さは結果として、全体の一糸乱れぬ演技につながった。


 また、アメリカンフットボールの校友会に属している野坂氏は「どんな人に下級生はついていきたいか」を意識しながら日々行動している。彼は今、第4学年であり、下級生を引っ張っていく立場である。その中で多くの経験・知識がある第4学年が、経験の浅い下級生たちに何をどう伝えていくべきか「情報の選択」に注意をしている。


 「今までに辛い、辞めたいと思うことはなかったか」という質問に大谷氏は「自分一人では続かなかった。しかし隣を見ればそこには一緒に頑張っている同期や仲間がいる。だからこそ頑張ろうと思える。辞めようと思ったことはない」と話した。また、野坂氏は「これを乗り越えたら強くなれる、突き進んでいこう」と力強く述べた。これらの言葉は私の中で取材後も絶えず響き続けている。


 彼らは防大生とはいえ、私たちと同じ学生だ。休日になり校友会のない日には同期と食事に行き、女子学生であれば普段できないメイクやおしゃれをして出かける。しかし、彼らは、学生生活を通して一般の学生よりも強い、諦めない心、団結力、そしてどんな困難にも立ち向かっていく強靭な精神を身につけている。そのたくましさ、そして夢や目標に向かって駆け走る彼らの姿はとても立派で輝いていた。(三浦エリカ)

※解説
<儀仗隊>式典や賓客を迎える際の儀礼を行う部隊であり、防衛大学校では学生で編成されている。

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