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【特集=本学の経済事情】図書館の予算運用
よりよい大学図書館のために
本記事では、学生1人あたりの学費の使途において約2%を占める図書館関係の予算を取り上げる。本学図書館の予算編成について、図書館事務部市ヶ谷事務課課長の須賀真弓氏、図書館事務部市ヶ谷事務課主任の久留宮健氏、加藤恵美氏に話を聞いた。
本学HPでは、本学の財政状況について次のように述べられている。収入面においては、文部科学省による入学定員管理の厳格化政策により、学生生徒等納付金の大幅な増額を見込むことは困難である。一方、施設・設備の維持や管理などにかかる経費のほか、奨学金など学生生活を支援する経費、グローバル化に伴う関連経費など、今後も拡大・固定化傾向が見込まれるものがあり、10月から施行された消費税率の改定などの要因も相まって、厳しい財政状況が続くことが見込まれる。
図書館では、毎年夏季休業明け、10月上旬までに来年度の予算編成を行う。市ヶ谷・多摩・小金井にそれぞれ図書館があるため部局は3つだが、予算編成の時期には1つの図書館事務部として、各部局から集まった職員がキャンパスごとの配分や用途を決める。予算を立てるにあたっては、過去の予算額や用途をふまえて適切なバランスになるよう工夫している。昨年度は本年度の消費増税を見越し、例年と合計額を変えることはなかったものの、その中で調整をしながら予算編成を行った。
こうした過程を経て組まれた予算は、どのように使われているのか。予算は主に、図書購入費、図書館を維持するための経費として使われている。本の購入においては、IT環境の発達に伴って資料の形態や入手方法が多様化しており、それに対応しながら予算を振り分けている。オンラインで閲覧できるデータベース・電子ジャーナル・電子ブックの購入が増えているのだ。2014年度から2018年度にかけて、資料構築予算における図書の割合が41・3%から16%に減っている。一方で電子資料の割合が44%から73%に増えており、大幅な変化がうかがえる。雑誌やシリーズものを除いて、紙の本は1冊買えばその後の継続金などはないが、3キャンパスに同じ本をそろえるには3冊購入する必要があり、置く場所についても考慮しなければならない。データベース、電子ジャーナルや電子ブックの場合は購入後のアクセス費やバージョンの変化による費用がかかるものの、1本契約すればいつでもどこでも閲覧できる。ただ現在、分野によっては紙での出版に遅れてオンライン版が出るもの、または紙のみで出版される方が多い場合もある。紙の本か、電子版か、両方購入するのか。購入する場合の取捨選択は、額面など様々なことを検討しながら行っているという。
本の購入における金額の制限について、キャンパスごとや図書館内の場所ごとに予算は組んでいるものの、購入希望など金額予測が正確にできないものもある。学生の購入希望の場合は比較的少額なため、選書方針に従ってできるだけ希望に沿うよう購入している。一方でデータベースなど高額なものについては、継続金についても考慮しなければならないため、契約の内容を見た上で決裁を取り、購入を検討している。教員からの購入希望の場合、高額なものは教授会での判断が必要になる。海外の出版社が多く、為替レートによる価格の変動を予想するのが難しいところが苦労する点だ。高額な資料ではあるものの、教員個人の研究のためだけではなく大学の共有資産として、本学における研究の歴史の積み上げ、また後の同分野の研究者の資源になりうる。単に金額だけでなく、大学図書館にとってどのような資料を構築するかにも配慮している。
本の購入以外の予算用途として、図書館の業務委託がある。本学図書館では現在、開架と閉架、本の納品や装備といった管理関連の業務など一部を株式会社紀伊國屋書店に委託している。毎年業者を選定し、仕様書提出や見積もり、決裁手続きなどを経て契約に至る。業務委託をすることで、職員はデータベースの選定や操作確認、ガイダンス運営など他の業務の充実に繋げている。
資料費や人件費だけでなく、設備費にも予算を割かなければならない。OPAC(Online Public Access Catalog)などのシステム管理や、いすや机などの備品入れ替えなど多岐にわたる。例えばWi―Fi接続に問題がある場合はポイントの位置を変えるための工事実施を行い、飲食スペースを確保してほしいなどの要望に対しては換気扇を装備するなど、対策を講じるための予算配分も行っている。
ここまでに挙げた以外にも、私たちの学費の一部が使われている場面はたくさんある。図書館においては、学生生活に役立ててほしいという思いで予算編成や資料選定が行われている。これからも、学生や教員ひいては本学のため、適切な予算編成や運用を期待したい。(小林真冬香)
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